法定相続人とは? 法定相続人の範囲や順位を弁護士が解説

法定相続人は民法において決められた遺産を相続できる人のことです。

遺産相続でまず問題になるのは、「親族のどこまで相続する権利があるのか」です。遺言がない場合には、民法で定められた法定相続人が相続する権利を持ちます。
この記事では、法定相続人とは何か、法定相続人の範囲・順位や相続割合について、遺産相続に強い弁護士が分かりやすく解説していきます。

(執筆者)弁護士 坂尾陽(Akira Sakao -attorney at law-)

2009年      京都大学法学部卒業
2011年      京都大学法科大学院修了
2011年      司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~     アイシア法律事務所開業

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法定相続人とは?

 

法定相続人とは民法において定められた遺産(相続財産)を取得する権利がある人のことです。民法886条から890条において、誰がどのような場合に法定相続人になるかが定められています。

亡くなった被相続人の遺産は、遺言書がないときには原則として法定相続人が取得します。民法では法定相続人の範囲・順位や相続割合について定められており、遺言書がない場合には、民法の定めを基準として遺産を分けることになります。

MEMO

相続の流れは遺言の有無で大きく変わります。法定相続人がとくに重要になるのは遺言がない相続のケースです。

 

法定相続人の範囲と順位について

法定相続人の範囲とは、被相続人の親族などのうち誰が相続人になれるかの問題です。

法定相続人の範囲は、具体的なケースにおいて、どのような親族がいるかで異なります。例えば、被相続人の兄弟姉妹は、被相続人の子どもや親がいないときだけ法定相続人になります。このように法定相続人になれる親族には順番があります。これを法定相続人の順位といいます。

法定相続人の範囲と順位については、民法で配偶者及び配偶者以外について3つの順位が決められています。

 

被相続人の配偶者は常に法定相続人になる

被相続人に配偶者(夫や妻)が居るときは常に相続人となります(民法890条)。配偶者は、他にどんな親族がいるかに関わらず法定相続人になると覚えてください。

内縁関係の相続について

相続における「配偶者」は法律上の婚姻関係に限られます。事実婚・同性婚のパートナーや内縁関係にある場合は法定相続人ではなく、遺言書がない限り被相続人の遺産を相続する権利はないのでご注意ください。

 

第1順位の法定相続人:子ども

まず、第1順位の法定相続人は子どもです(民法887条)。子どもは第一順位の法定相続人であるため、被相続人に親や兄弟姉妹という後順位の法定相続人は、被相続人の子どもがいる限りは法定相続人になりません。

被相続人の子どもが既に亡くなっているものの、被相続人に孫がいるときは孫が子どもの代わりに第1順位の法定相続人になります。これは代襲相続と言いますが、代襲相続については別途解説します。

なお、被相続人と結婚した配偶者の連れ子については、基本的には被相続人と連れ子の間には親子関係が存在しません。配偶者の連れ子が相続人になるためには、被相続人と連れ子の間で養子縁組をする必要があります。

なお養子縁組と相続については下記記事も参考にしてください。
(参考)相続と養子縁組について遺産分割・遺留分侵害額(減殺)請求・相続税対策の違いを解説

MEMO

子どもや孫のことを直系卑属とも言います。「直系(ちょっけい)」というのは、垂直的な血縁関係を意味します。また、「卑属(ひぞく)」とは、ある人にとって自分より後の世代に属する親族を指します。

 

第2順位の法定相続人:両親や祖父母(直系尊属)

被相続人に子どもや孫という第1順位の法定相続人がいないときは、第2順位である被相続人の両親や祖父母が法定相続人になります。民法においては、「被相続人の直系尊属」(民法889条1号)と定められていますが、直系尊属とは要するに両親や祖父母のことです。

両親も祖父母も健在のときは、被相続人との親等が近い両親が法定相続人となります。

「直系尊属」の「尊属」とは、卑属に対応する相続関連用語で、ある人にとって自分より前の世代に属する親族を指します。また、法定相続人であるためには「直系」である必要があるため、例えば、配偶者の両親や祖父母(義理の両親や祖父母)は、垂直的な血縁関係にあるわけではないため法定相続人とはなりません。

 

第3順位の法定相続人:兄弟姉妹

被相続人に子ども・孫や両親・祖父母がいない場合は、第3順位である兄弟姉妹が法定相続人にあります。兄弟姉妹が既に亡くなっているものの、兄弟姉妹の子ども(甥や姪)がいるときには、兄弟姉妹の子どもが代わりに第3順位の法定相続人になります(代襲相続)。

 

法定相続人の範囲と順位の早見表

法定相続人の範囲と順位をまとめると以上の通りとなります。

配偶者 子ども・孫 両親・祖父母 兄弟姉妹
配偶者+第1順位 × ×
配偶者+第2順位 × ×
配偶者+第3順位 × ×
第1順位のみ × × ×
第2順位のみ × × ×
第3順位のみ × × ×

 

法定相続人が居ないとき:相続財産管理人の選任

被相続人に配偶者が居らず、子ども・孫、両親・祖父母、兄弟姉妹などの法定相続人もいないときは相続人が不在ということになります。例えば、被相続人の配偶者が既に亡くなっており、配偶者の両親(義両親)と生活していたような場合でも、義両親は法定相続人ではないため相続人が居ないことになりますのでご注意ください。

法定相続人がいない場合、被相続人の遺産は遺言書があればその通りに分配されます。しかし、法定相続人もおらず、相続人もいないときは、家庭裁判所に相続財産管理人の選任を請求して、相続財産管理人が遺産相続の問題を処理します(民法951条~民法959条)。

 

法定相続人の相続分

法定相続人の相続分は、上記の通り法定相続人の範囲が定まったときに、誰がどの程度の遺産(相続財産)を取得するかの割合です。民法において、各法定相続人が取得する遺産の目安を定めており、これを「法定相続分」といいます。

 

法定相続人の順位が同じものしか存在しない場合

法定相続人の順位が同じものとしか存在しないときは、当然ながら当該法定相続人が遺産(相続財産)の全部を相続する権利を有します。

具体的には、配偶者のみが法定相続人であるケースか、配偶者がおらず子ども・孫、両親・祖父母、兄弟姉妹のみが法定相続人であるケースが考えられます。

なお、子どもや兄弟姉妹が複数いるケース、両親・祖父母がいずれも健在なケースでは、同順位の法定相続人が複数いることになります。このような場合、同順位の法定相続人は原則として均等の割合で法定相続分を持つことになります(民法900条4号)。

異母・異父兄弟姉妹について

被相続人の両親が再婚していたため、兄弟姉妹のうちに異母・異父兄弟姉妹がいるときは、異母・異父兄弟姉妹については被相続人と両親ともに同じ兄弟姉妹の半分しか相続分がありません(民法900条4号但書)。

注意

過去において、同順位の法定相続人のうち子どもについては、非嫡出子は嫡出子の半分しか相続分がないとされていました。しかし、最高裁平成25年9月4日決定は、非嫡出子を嫡出子より不利に扱うのは法の下の平等に反して違憲と判断し、これを受けた法改正により、現在は嫡出子と非嫡出子の相続分な均等とされています。

 

配偶者と子ども・孫が法定相続人の場合

配偶者と第1順位の法定相続人である子ども・孫がいるときは、配偶者と子ども・孫がそれぞれ2分の1ずつ法定相続分を有します。

 

具体例

子ども・孫が複数いる場合は、子どもの人数による均等で法定相続分が決まります。例えば、被相続人の遺産が1億円あり、配偶者と子ども2人がいるときは、配偶者が1/2の5000万円、子どもがそれぞれ2500万円を取得することになります。

なお、子どもの片方が亡くなっているものの、孫が2人いるときは、孫が2人で亡くなった子どもの法定相続分2500万円を取得するため、孫1人当たり1250万円を取得することになります。

 

配偶者と両親や祖父母が法定相続人の場合

配偶者と第2順位である親や祖父母が法定相続人になるときは、配偶者:両親or祖父母=2/3:1/3の割合で法定相続分を有します。

 

具体例

例えば、被相続人の遺産が3億円あり、被相続人の配偶者と両親がいずれも健在であれば、配偶者が2億円、両親が1億円を分けるため各5000万円ずつを取得することになります。

 

配偶者と被相続人の兄弟姉妹が法定相続人の場合

配偶者と第3順位である兄弟姉妹が法定相続人になるときは、配偶者:兄弟姉妹=3/4:1/4の割合で法定相続分を有します。

 

具体例

例えば、被相続人の遺産が4億円あり、被相続人の配偶者と兄弟姉妹4名がいずれも健在であれば、配偶者が3億円、兄弟姉妹が4名で1億円を分けるため各2500万円ずつを取得することになります。

このとき兄弟姉妹のうち1名が亡くなっており、その子ども(甥・姪)が2名いるときは、甥・姪が兄弟姉妹の代わりに相続分を取得するため、各1250万円ずつ相続財産を取得します。

 

法定相続人の範囲と順位に関する注意点

法定相続人の範囲は、民法に定められた順位に従って決定されるのが基本です。ただし、「特別な事情があるときは法定相続人の範囲はどうなるか?」と疑問に感じる人もいるのではないでしょうか。

 

代襲相続により法定相続人の範囲が変わるケース

例えば、法定相続人が先に死亡していたケースなどがあります。例えば、被相続人の子どもが既に死亡していたときは、被相続人の孫が子どもの代わりに相続権の順位を引き継ぐのです。これを代襲相続(だいしゅうそうぞく)と呼びます。

 

代襲相続は、この他にも相続欠格(けっかく)や相続廃除(はいじょ)でも適用されます。例えば、法定相続人が被相続人を殺してしまった場合や遺言書を破棄したような場合には相続欠格となります。また、法定相続人に著しい非行があり被相続人が遺言で相続廃除をするようなことがあります。

このような相続欠格・相続廃除に該当する場合はその法定相続人は相続ができませんが、その代わりに子どもが代襲相続をして法定相続人になります。

 

法定相続人が相続放棄をしたケース

法定相続人が相続放棄をした場合には、その法定相続人は居なかったものとして扱われます。

最初から法定相続人でないと扱われるため相続欠格・相続廃除と異なり、相続放棄の場合には代襲相続は起こりません。同順位の法定相続人がその人しかいない場合は、次順位の法定相続人が相続します。

例えば、被相続人の一人っ子が相続放棄をした場合には、孫が居たとしても代襲相続は起りません。この場合には被相続人の両親や祖父母が法定相続人になります。

 

非嫡出子や連れ子が法定相続人になるケース

非嫡出子や連れ子はそれだけでは法定相続人になりません。

法律上の配偶者(妻)との間で生まれていない非嫡出子については認知をすることで親子関係が生じます。従って、認知をすることで子どもとして認められ法定相続人になります。なお、認知は被相続人(父親)が遺言で行うこともできますし(遺言認知)、被相続人(父親)の死亡後に認知を請求することもできます(死後認知)。

また、被相続人の配偶者の連れ子は、それだけでは被相続人との間に親子関係がありません。このような場合には、被相続人と連れ子で養子縁組をすることにより、連れ子は被相続人の子どもとして法定相続人になります。

 

まとめ:法定相続人をきちんと把握しよう!

相続が開始したときは、まず誰が法定相続人になるかを把握する必要があります。遺言書がないときは法定相続人が相続手続きを行う必要があります。

この記事では、法定相続人の範囲・順位や相続分について解説しました。なお、法定相続人が誰かが分からないときは「相続調査」を行うこともあります。詳しくは下記記事もご覧ください。

(参考)相続調査とは?相続人調査と相続財産調査に分けて何を行うかやメリットを相続弁護士が解説

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