特別受益とは何か?特別受益があるときの遺産分割の割合や遺留分の計算方法について相続法改正を踏まえて解説

特別受益制度は、相続人の誰かが被相続人から生前贈与などを受けていたときに、相続時に他の相続人との不公平が生じることを防ぐための制度です。

特別受益には遺贈、婚姻・養子縁組の費用、生活の資本の援助などがあります。特別受益を受けた相続人は、具体的な遺産分割の割合や遺留分を算定するときに、特別受益の金額を相続財産に持戻して計算する必要があります。

この記事では、具体的相続分・遺留分の算定で問題になる特別受益について、実務的な問題などを踏まえて遺産相続に詳しい弁護士が解説します。

(執筆者)弁護士 坂尾陽(Akira Sakao -attorney at law-)

2009年      京都大学法学部卒業
2011年      京都大学法科大学院修了
2011年      司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~     アイシア法律事務所開業

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特別受益の概要

特別受益とは

特別受益とは、相続人の一部のものが、被相続人から遺贈、婚姻・養子縁組の費用、生活資本の援助などを受けたことにより得た利益のことをいいます(民法903条1項)。どのような財産が特別受益財産になるかは問題となるところであり、後で解説します。

特別受益財産と認められたときは、相続開始時の遺産(相続財産)に特別樹受益の金額を加算した「みなし相続財産」に基づいて遺産分割の割合や遺留分を計算します。このように、特別受益を相続財産に加算することを「特別受益の持戻し」といいます。

特別受益の制度は、何を特別受益と認めるかを判断した上で、特別受益の持戻しによって遺産分割の割合や遺留分を算定する制度です。

特別受益が問題となる場面

特別受益が問題となる場面は、具体的な遺産分割の割合の計算と遺留分の計算をする場面です。

遺産分割の割合は、法定相続人の順位・人数によって法律で定められています。法律で定められた遺産分割の割合のことを「法定相続分」といいます。
(参考)遺産分割の割合とは?遺産分割の割合を決める3つの方法や注意点を解説

しかし、法定相続分はあくまで法律で定められた原則的な割合です。特別受益や寄与分があるようなケースでは具体的事情によって法定相続分を修正して、最終的に決まる遺産分割の割合を「具体的相続分」といいます。特別受益は具体的相続分を計算するときに問題となります。

また、

また、遺留分を計算するときも特別受益が問題になります。例えば、相続開始時の遺産(相続財産)に比べて特別受益の金額が大きいため遺留分を侵害されるときや、遺言書で特別受益の持戻し免除の意思表示がされており遺留分を侵害される場合があります。このような場合には、遺留分侵害額(減殺)請求をすることになります。

 

特別受益者になる人の範囲

被相続人から特別受益を受けた「特別受益者」には以下のようなタイプがあります。

 

推定相続人

まず将来的に法定相続人になる予定の人は「推定相続人」となり、特別受益者となる場合があります。なお、推定相続人が被相続人から特別受益を受けたものの、その後死亡して代襲相続が起きたときには、その代襲相続人もまた特別受益者となります。

孫など(代襲相続人になりそうな者)

被相続人が孫に対して生前贈与をしたようなケースでは、代襲相続人になりそうな孫が特別受益者にあたるかが問題となります。

この点、例えば子どもが死亡しており孫が既に代襲相続人として推定相続人となっているときは特別受益者となります。他方で、子どもが存命中であれば孫は推定相続人ではないため、特別受益者にはなりません。

婚姻・養子縁組をする予定の者

婚約者や養子縁組をする予定の者は、その時点で被相続人から贈与等を受けても、その時点では推定相続人ではないため原則としては特別受益者ではありません。

しかし、被相続人が贈与等をした動機が婚姻・養子縁組の準備のためであるような場合には、実質的には推定相続人に対する贈与等であるため特別受益者と判断される場合があります。

相続人の配偶者を名義人とした場合

相続人の配偶者や親族は原則として相続人ではありません。そのため、相続人の配偶者や親族が被相続人から贈与等を受けたとしても特別受益者とはなりません。

しかし、贈与相手の名義人は相続人の配偶者としているものの、実質的に利益を受けているのが相続人であるような場合には、当該相続人が特別受益者と判断される場合があります。たとえば、被相続人が子どもの配偶者に高い資産価値が認められる高級外車を贈ったとします。しかし、当該配偶者には運転免許がなく、もっぱら被相続人の子どもが利用しているような場合には、推定相続人としての子どもが実質的に贈与を受けたとみなされ、その子どもが特別受益者となる可能性があるのです。

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特別受益となる財産とならない財産

特別受益となる財産については、民法においては以下のものが例示されています。

  • 遺贈
  • 婚姻・養子縁組のための贈与
  • 生計の資本としての贈与

しかし、それ以外の財産について法律上は既定がないため、特別受益となるかは事案に即した判断が必要となるのです。

子どもの結婚に関する贈与(持参金や結婚式費用)

結納金や結婚式費用を援助するケースは一般的には特別受益にはならないと実務上は考えられています。

他方で、持参金・支度金のようなものは、被相続人の資産状況に照らして高額であり、不要の範囲を超えるような場合には特別受益として扱われる場合があります。

学資の援助

子どもに学資を援助しているような場合は、親が扶養義務を履行しているのか又は特別受益にあたるのかを被相続人の資産状況や他の相続人との比較などを考慮して判断します。

たとえば、専門学校・大学・留学などの学資については、原則として扶養義務の履行であると言えるでしょう。また、相続人全員が大学教育を受けており、学資として等しく援助を受けているような場合には特別受益として考慮することはできません(大阪高裁平成19年12月6日決定など)。

他方で、相続人のうち一人だけが私立の医学部に進学して援助を得ていたような場合は、当該援助の金額が多額であるため特別受益と判断される場合もあるでしょう。

多数回にわたる少数の引出しがある場合(預貯金の引出し・使途不明金)

相続財産を調査したところ、被相続人名義の預貯金口座から同居親族が引出しをしていたと疑われるケースがあります。
(参考)相続財産調査費用の相場と弁護士に依頼する3つのメリット

このとき、被相続人の意思に基づいて同居親族の生活費を負担していても少額であれば特別受益と考えることは困難です。しかし、1回1回の引出金額は少額でも、長期間にわたって多数回の引出しにより総額が多額になった場合には特別受益として判断される余地があります。

たとえば、東京家裁平成21年1月30日審判では、約2年間にわたって1か月に2~25万円程度の送金がなされている事案において、1か月に10万円を超える部分については、特別受益としています。これに基づくと、実務上は親族間の扶養的金銭援助を超えるような場合には、少額・多数回の引出しが特別受益とされる余地があると言えるでしょう。

生命保険金

被相続人の死亡を原因として相続人が受ける生命保険金は原則として相続人固有の財産であるため、遺産分割や特別受益の対象となりません。
(参考)遺産分割の対象となる財産とならない財産について実務的な対応を踏まえて解説

もっとも、最高裁判例によれば、保険金受取人である相続人とその他の相続人間の不公平が特別受益制度の趣旨に照らして到底是認できないほどに著しいと評価できる特段の事情があるときは特別受益になると判断されています(最高裁平成16年10月29日決定)。

具体的には、生命保険金の金額が相続開始時の遺産(相続財産)の50%を超えるような場合は、著しい不公平があるとして特別受益と判断される可能性があります。

(参考:生命保険金と特別受益に関する裁判例)

裁判例 生命保険金額
÷相続財産の総額
特別受益該当性
東京高裁平成17年10月27日決定 99.9% 特別受益にあたる
大阪家裁堺支部平成18年3月22日審判 6.1% 特別受益にあたらない
名古屋高裁平成18年3月27日決定 61.1% 特別受益にあたる

死亡退職金

死亡退職金については原則として特別受益にあたらないと考えられます。

不動産の使用権に関する問題

相続人が被相続人名義の建物に無償で居住していたような場合は、原則として特別受益にあたらないと考えられます。建物の賃料相当額の受益を受けているとしても、基本的には遺産の前渡しとしての性格は薄いためです。

他方で、土地に関する使用権の問題として、被相続人の借地権の承継・設定や土地についての使用借権は特別受益になるケースが多いと考えられます。例えば、東京家裁平成12年3月8日審判は、従前の経緯に照らして被相続人から借地権の贈与を受けたと認定しています。

 

特別受益制度に関する2019年相続法改正

2019年に相続法が改正されて、特別受益制度にも変更がありました。相続法で改正された点について「特別受益の持戻し」について2つのポイントがあります。

先述の通り「特別受益の持戻し」とは、遺産分割の割合や遺留分を算定するときに被相続人からの生前贈与などを相続財産に組み入れて精算することで、共同相続人の間の公平性を確保する考え方です。
この点に関して相続法改正による変更があります。

 

01 特別受益の持戻し期間が10年間に限定

まず、遺留分を算定するときにおける生前贈与の持戻し期間が「相続開始前の10年間」に限定されました。

相続法改正前は相続人に対する生前贈与はすべて遺留分算定のために算入するというのが判例の立場でした(最高裁平成10年3月24日判決)。しかし、何十年前にした生前贈与を考慮するのは妥当ではありません。

そこで、相続法改正により、遺留分の算定における相続人に対する生前贈与の範囲について規定をもうけ、相続開始前10年間にされたもののみを遺留分算定の根拠とする旨の改正がされました。

02 特別受益の持戻し免除の意思表示を推定

また結婚期間20年以上の配偶者に対して居住用不動産(自宅)の生前贈与・遺贈については原則として特別受益の対象外とされました。これは厳密には特別受益にはあたるものの、被相続人の意思として特別受益として遺産分割をすることを想定していないため、特別受益の持戻し免除の意思表示を推定すると構成されています。

 

特別受益があったときの遺産分割の割合・遺留分の算定方法

特別受益があったと判断されたときは、具体的な遺産分割の割合(具体的相続分)や遺留分を算定するときに特別受益の金額が以下のように考慮されます。

 

特別受益があるときの具体的相続分の算定方法

特別受益者がいたときの具体的相続分算定の基本的な考え方は、相続開始時の遺産(相続財産)に特別受益のうち生前贈与の金額を加算して「みなし相続財産」を計算します。

そして、特別受益者については、みなし相続財産×法定相続分-特別受益の金額=具体的相続分となります。他方で特別受益がない相続人についてはみなし相続財産×法定相続分が具体的相続分となります。

MEMO

ポイントは生前贈与の金額はみなし相続財産の算定で加算しますが、遺贈の金額はみなし相続財産の算定では加算しないという違いがあることです。他方で、特別受益の金額としてマイナスをするときは生前贈与・遺贈のいずれも控除します。

 

具体例

たとえば、被相続人の相続時点の遺産(相続財産)が1億円であり、相続人として1000万円の生前贈与を受けた配偶者(法定相続分1/2)、1000万円の生前贈与を受けた長男・500万円の遺贈を受けた次男だとします。

この場合、みなし相続財産は1億円+1000万円(妻の生前贈与)+1000万円(長男の生前贈与)=1億2000万円です。次男の遺贈についてはみなし相続財産の算定時には加算しません。

配偶者は1億2000万円×1/2-1000万円=5000万円が具体的相続分になります。

長男は1億2000万円×1/4-1000万円=2000万円が具体的相続分になります。

次男は1億2000万円×1/4-500万円=2500万円が具体的相続分となり、さらに遺贈として500万円を貰います(合計3000万円)。

特別受益があるときの遺留分侵害額の算定方法

特別受益があるときの遺留分の算定については、持戻し免除の意思表示の有無にかかわらずすべての特別受益を持戻して計算する必要があります。具体的相続分の計算と異なり、遺留分は被相続人の意思とは関わりなく相続人の最低限保証される権利であるため、被相続人が持戻し免除の意思表示をしたとしても考慮されないのです。

遺留分侵害額は2019年相続法改正によって明確化された点です。遺留分侵害額は、

遺留分額

-遺留分権利者の受けた特別受益の金額

-遺産分割対象財産があるときの遺留分権利者の具体的相続分に相当する金額

+遺留分権利者が承継する債務

とされています。

たとえば、被相続人の相続時点の遺産(相続財産)が1億円であり、相続人として1000万円の生前贈与を受けた配偶者(遺留分1/4)、1000万円の生前贈与を受けた長男(遺留分1/12)・500万円の遺贈を受けた次男(遺留分1/12)・残りの全財産を遺贈される三男がいるとします。

この場合、遺留分算定の基礎財産は1億円+1000万円(妻の生前贈与)+1000万円(長男の生前贈与)=1億2000万円です。そして、

配偶者は1億2000万円×1/4-1000万円=2000万円について遺留分侵害額請求ができます。

長男は1億2000万円×1/12-1000万円=0円となるので遺留分侵害額請求はできません。

次男は1億2000万円×1/12-500万円=500万円について遺留分侵害額請求ができます。

このため配偶者・次男は三男に対して遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)をすることができると言えます。

超過特別受益の取扱いについて

なお、相続分を超える特別受益を超過特別受益といいます。超過特別受益を得ていた超過特別受益者は、相続にあたって新しい財産を取得することはできませんが、超過分について返還する必要もありません。

このような場合は他の相続人が取得する相続財産は具体的相続分に満たないこともあります。ただし、超過特別受益のために遺留分を侵害するときは、遺留分侵害額(減殺)請求の対象となる場合があります。

超過特別受益のために不公平だと感じるようなときは遺産分割や遺留分侵害額請求(旧:遺留分減殺請求)に強い弁護士に相談することをおすすめします。
(参考)遺留分侵害額請求に強い弁護士に無料で法律相談するなら

 

まとめ:特別受益は遺産分割の割合や遺留分の計算で重要

遺贈・生前贈与された財産を特別受益にあたるかどうかは、被相続人と贈与を受けた相続人との関係などに左右されるため一意的に決まるものではありません。特別受益があるときは、遺産分割の割合や遺留分の計算に大きな影響を与えます。

もし、他の相続人が生前贈与や遺贈を受けており自分が不利に扱われていると感じるケースでは、適切に主張立証すれば遺産(相続財産)を多めに貰うことができるかもしれません。

特別受益の問題は具体的事情により異なりますし、計算方法も複雑です。特別受益で悩んだら遺産相続問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。

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