遺産分割の割合とは?遺産分割の割合を決める3つの方法や注意点を解説

遺産分割の割合とは、被相続人の遺産(相続財産)を複数の相続人の間で分けるときの割合のことです。

相続人が複数いる場合は、誰がどの遺産(相続財産)を貰うかや、どのように遺産を分けるかを決める前に遺産分割の割合を決める必要があります。

具体的には遺産分割の割合は以下の順番で決められます。

  • 遺言書がある場合は遺言書に従う
  • 遺言書がない場合は法定相続分が目安となる
  • 最終的に法定相続人間の遺産分割協議で決まる

この記事では、遺産分割の割合を決める上記3つの方法について、相続の流れや遺産分割のポイントについて実務的な問題点を踏まえて遺産相続に強い弁護士が解説します

(執筆者)弁護士 坂尾陽(Akira Sakao -attorney at law-)

2009年      京都大学法学部卒業
2011年      京都大学法科大学院修了
2011年      司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~     アイシア法律事務所開業

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遺言がある場合の遺産分割の割合

遺言書の有無を最初に確認する

相続が開始したときは、まずは遺言書の有無を最初に確認する必要があります。遺言書の有無によって相続手続きや遺産分割の流れは大きく変わるからです。

遺言書には、大きく分けると「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」があります。公正証書遺言の場合、公正役場に保管されているため、どこの公正役場に保管されているのかを検索することができます。

しかし、自筆証書遺言の場合は、どこに保管されているのか分からないケースが少なくありません。そのため、自筆証書遺言がある場合は、「どこに遺言書を保管しているのか」について、被相続人の存命中から確かめておいた方が良いでしょう。なお、自筆証書遺言を発見したときは原則として家庭裁判所で検認してもらうことが必要です。

 

原則として遺言書通りの遺産分割の割合になる

被相続人の遺言書が見つかった場合は、原則として遺産分割の割合については、遺言書に従う必要があります。

なぜなら、法律において遺産分割の目安の割合は決められていますが、遺言書がある場合にはこれを変更することができるからです。

 

遺産分割の割合が不公平なときは遺留分侵害額請求を行う

遺言書がある場合は遺言書通りに遺産分割の割合が決まります。しかし、遺産分割があまりにも不公平な場合、相続人の中には不満を持ってしまう人もいるのではないでしょうか。この場合、「遺留分侵害額請求(旧:遺留分減殺請求)」を行うことができます。

遺留分とは、法定相続人に最低限保証されている遺産分割の割合のことです。具体的には法律で決められた法定相続分の1/2~1/3が遺留分となります(原則として1/2ですが、直系尊属のみが法定相続人の場合は1/3となります。)。

遺留分侵害額請求については下記記事も参考にしてください。
(参考)遺留分侵害額(減殺)請求に応じないときのたった1つのポイント:拒否する根拠や成功させる方法も解説

具体例

たとえば、配偶者はおらず、相続人は長男・次男・三男の3人のみです。この場合に被相続人が「長男にすべての財産を相続させる」という遺言を残したとします。

そうすると次男・三男は自分に不利な遺言書の内容に不満を持つでしょう。このような場合に、次男・三男は遺留分を侵害されていることになります。相続人が子どものみの場合、遺留分は1/2です。この1/2を3人で割ると、1人あたりの遺留分は6分の1です。そのため、次男と三男は長男に対して6分の1ずつの遺留分侵害額請求を行うことができます。

たとえば、相続財産が3億円あった場合、遺言書で「長男にすべての財産を相続させる」と記載してあっても、次男・三男がそれぞれ遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)を行うことでそれぞれ5000万円ずつを長男から貰うことができます。

結果として、遺産分割の割合は、長男:次男:三男=2億円:5000万円:5000万円となります。

 

遺言書がない場合は法定相続分が遺産分割の割合の目安となる

法定相続分=法律による遺産分割の割合

遺言書がない場合の遺産分割の割合については法律で決められている「法定相続分」が目安になります。法定相続分とは、法定相続人の順位や種類に応じて法律で決められている、各法定相続人が取得する遺産分割の割合のことです。

 

誰が法定相続人になるか

誰が相続人になるかについては、法律において範囲と順位が決められています。法律で定められた相続人のことを「法定相続人」といいます。

法定相続人の範囲は、「配偶者」「子ども」「両親」「兄弟姉妹などの血縁関係にある人」です。配偶者は、どのケースでも必ず法定相続人になります。ただし、子ども・両親・兄弟姉妹の場合は順位が決められており、第1順位が子どもや孫、第2順位が両親か祖父母、第3順位が兄弟姉妹です。法定相続人について詳しくは下記記事を参考にしてください。
(参考)法定相続人とは? 法定相続人の範囲や順位を弁護士が解説

例えば、被相続人に子どもがいない場合は、親が相続し、子どもも親もいない場合は兄弟姉妹が相続することになります。法定相続分は順位によって割合が異なります。

CASE1:相続人が配偶者と子どもの場合の遺産分割の割合

配偶者と子どもがそれぞれ2分の1ずつです。たとえば、配偶者と子どもが3人いる場合は配偶者が2分の1、子どもは2分の1×3分の1=6分の1ずつになります。

CASE2:相続人が配偶者と親の場合の遺産分割の割合

配偶者は3分の2、親は3分の1です。例えば、両親がどちらも健在の場合は3分の1を2人で分けるため、配偶者が3分の2、父親と母親がそれぞれ3分の1×2分の1=6分の1ずつになります。

CAS3:相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合の遺産分割の割合

配偶者は4分の3、兄弟姉妹は4分の1です。例えば、兄弟姉妹が3人いる場合は、配偶者が4分の3、各兄弟姉妹はそれぞれ4分の1×3分の1=12分の1ずつになります。

 

遺産分割の割合で揉めないように相続人を調査する

こうした法定相続分の割合を見ていくと、どの順位の相続人が何人ぐらい居るかで遺産分割の割合が変わるのが分かるでしょう。

遺言書がない場合は相続人の順位と法定相続分によって遺産分割の割合が決まるので、「法定相続人が何人いるのか」についてしっかりと調査および把握しておくことが重要です。

遺産分割の話し合いが進んだ段階で、実は他に相続人が現れた場合は、トラブルの元になりかねません。遺産分割の割合が完全に変わるのでそこまでの手続きが無駄になってしまいます。

例えば、被相続人が過去に離婚していたとします。前の配偶者には相続する権利はありませんが、前の配偶者との間に子どもがいる場合は、子どもが法定相続人になってしまうのです。また、前配偶者との間に子どもがいなくても、被相続人が認知している子ども(非嫡出子)がいる場合も、その子どもは法定相続人になります。さらに、血がつながっていなくても、養子縁組をしている子どもがいる場合も、法定相続人です。

このようなケースもあるため、遺言書がない場合には相続開始直後にしっかりと相続調査をする必要があります。相続調査については下記記事を参考にしてください。
(参考)相続調査とは?相続人調査と相続財産調査に分けて何を行うかやメリットを相続弁護士が解説

 

遺産分割協議による遺産分割の割合の決定

遺産分割の割合を遺産分割協議で決定する

遺言書がない場合は法定相続人間の遺産分割協議により遺産分割の割合や方法を決めることになります。つまり、法定相続人全員で「どのように遺産を分けるのか」について話し合うことが必要です。

ここでポイントとなるのが、法定相続人全員ということです。法定相続人が1人でも欠けた状態での協議は無効です。また、多数決ではなく相続人全員が合意しなければ協議内容は有効にはなりません。

 

どのように遺産分割の割合を決めるか

遺産分割協議における遺産分割の割合については法律上の決まりはありません。法定相続人全員が納得できれば自由に遺産分割の割合を決めることができます。例えば、相続財産が1億円で兄弟3人で相続する場合に長男に5000万円、次男・三男に2500万円ずつといったことも可能です。

しかし、実務上は、原則としては法定相続分をベースとして、遺産分割協議における話し合いで微調整をして遺産分割の割合が決まることが多いです。微調整をするケースとしては、法定相続分通りでは納得がいかない相続人が出てくる事情があるときや、遺産(相続財産)が法定相続分通りには分けられないようなケースです。

 

寄与分:親の介護を理由に遺産分割の割合を調整する例

例えば、法定相続人のうち長男のみが被相続人である親の介護を負担していたような場合です。この場合には、長男の寄与分が認められて遺産分割の割合が法定相続分よりも増える可能性があります。

仮に、3兄弟で3,000万円の相続財産を分割する場合、寄与分を加味しなければ、3分の1ずつの1人あたり1,000万円が遺産分割の割合です。

しかし、長男に300万円の寄与分が認められた場合は、3,000万円から300万円を引いた2,700万円を3人で分割することになります。この場合は、遺産分割の割合は、長男が300万円+900万円で1,200万円、次男と三男が各900万円となります。

 

特別受益:住宅購入費用の贈与を理由に遺産分割の割合を調整する例

例えば、法定相続人のうち長男のみが被相続人から住宅購入費用として多額の贈与を受けていたような場合は、法定相続分のまま遺産分割の割合を決めると不公平です。このような場合は特別受益が認められて生前贈与分を差し引いて遺産分割の割合を決めることになる場合があります。

仮に3兄弟で3000万円の相続財産を分割する場合、長男が300万円生前贈与を受けていたため特別受益があったとされたときは、まず相続財産3,000万円の中から次男と三男でそれぞれ300万円ずつ受け取ります。残りの相続財産は、2,400万円になり、これを3人で分割するため最終的な遺産分割の割合は、長男が800万円、次男・三男は1,100万円ずつとなります。

 

遺産分割の割合をめぐって揉めたときの対応

遺産分割の割合や方法について相続人全員が合意したら「遺産分割協議書」を作成しておいたほうがいいでしょう。なぜなら、遺産分割後になって「言った・言わない」などの水掛け論となるトラブルを防いだり、相続手続きを行う際の必要書類となったりするからです。

もし、遺産分割の割合をめぐって法定相続人の意見がまとまらず、遺産争いが泥沼化してしまった場合は、「家庭裁判所に遺産分割調停を申し出る」といった方法を選択することも可能です。この場合、裁判官や調停委員などの第三者が協議に介入することになります。それでもまとまらない場合は、審判にまで発展し、強制的に分割方法が決定されることになるでしょう。遺産分割の進め方については下記記事も参考にしてください。
(参考)遺産分割の手続きで損をしないための進め方と知っておくべきポイント

 

まとめ:遺産分割の割合のポイントを押さえる

相続手続きを行うときは、遺言書があるか否か、誰が法定相続人であるかが決まったら、次に遺産分割の割合が問題になります。誰がどの程度の遺産を貰えるかを決めた上で、具体的な遺産分割の方法を考える必要があります。

法定相続人が複数いる場合は、相続人同士の意見が交錯してトラブルになりやすいものです。「争続」とならないためにも、遺産分割の割合を決めるときのポイントについて解説しました。この記事で解説したポイントを最後にまとめます。

  • 遺言書による遺産分割の割合を決定するときの問題点
  • 法定相続分とは何か、どのように決まるのか
  • 遺産分割協議で遺産分割の割合を決める方法や注意点

遺産分割の割合を決める方法や流れについてしっかりと押さえておくようにしましょう。

なお、遺産分割の割合が決まったら、次は具体的にどのように遺産(相続財産)を分けるかという「遺産分割の方法」が問題になります。遺産分割の方法については下記記事を参考にしてください。
(参考)遺産分割の方法-主要3種類の方法と注意点を相続弁護士が解説

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